千心美生
先人の不断の努力に感謝し、希望をもってつないでいくこと。
歴史が好きです。二十代は幕末の志士に憧れて高杉晋作や坂本竜馬に恋していました。三十代では、大陸の歴史に惹かれて、ハプスブルク家や史記の壮大で圧倒的な物語に没頭し、四十代では江戸時代の文化や風俗が面白くて、北斎や若冲や文楽を観に行くのがとても楽しみでした。今は戦国時代。戦国武将と呼ばれる人は、八百人とも千人とも言われています。その生涯や決断の厳しさは到底想像がつきません。今からは考えられないぐらい不便で不自由な時代に、人はあらん限りの知恵と努力で精一杯生き抜いていったことを思うと、ささいなことで悩んだり、諦めたりしてはいけないなと励まされます。
現在、社会情勢や経済や環境の不安定さ、格差や福祉の綻びなど、新聞やテレビを見ていると、ことさら不安を煽るような表現が多いことが気になります。勿論、国民として為政者の活動の健全性や、税金の適正な運用に強く関心を持ちつづけなければなりませんが、「この先どうなるんでしょう」という問題提起で終わることにとても不満が残ります。歴史から見て、現代より安全で文化的で衛生的な時代はありません。先人の不断の努力と試行錯誤の積み重ねのおかげで、今日があるのだと思います。歴史に名を残すほどの志と才能を持つ人が、その発展途上の社会の中で命を潰えさせる場面に出会う度に、自分が今の時代に生まれた幸運に思い至ります。
そして、人はもっと進化していくと思います。どんな時代であれ、私たちが将来にいだくものは不安ではなく、希望だと思います。それは歴史が証明しているのですから。
代表取締役 千堂 純子