千心美生
ものごとがうまくいかなかった原因として「コミュニケーションが足りなかった」と分析されることがよくあります。
家庭でも社会でも一人ぼっちで成し遂げるものは殆どありません。孤高の戦いをしているように見えるスポーツ選手であってもバックアップの人たちを抜きにして勝てるものではありません。
人は協力しあってしか生きていけないのです。
ものごとがうまくいかなかったのは、協力関係がうまく作れなかったということなのです。
コミュニケーションを日本語になおすと、意思疎通・情報交換・情報共有などと訳されます。
ここに大きな誤解が生じるのではないかと思うのです。
言葉は便利な伝達手段ですが、すべてを表現できるものではありません。なのに人は自分の思っていることを他人に理解してもらいたい生き物です。理解して共感して応援してもらいたいといつも考えているのが人間なのです。
しかし全員が「発信」しかしなかったとしたらコミュニケーションが成り立つはずがありません。
人間に口が一つと耳が二つあるのは神様が話すよりよく聴くようにと作られたと子どものときに誰かから教えられました。
古代中国の皇帝が政治を行うのを「聴政」といい、民の声や天の声を聴くことが重要な役割だったといいます。
まずは相手の話を聴くことがコミュニケーションの基本なのです。
言いたいことが先にたつのをちょっと待って、話を聴く。自分の話す時間の二倍を相手の話を聴く時間とするよう心掛ける。これでコミュニケーションはうまくいくのだと思います。
各地の名だたる大名たちが、天下統一を目指して覇権を争った戦国時代。木曾川の川べりに居を構える川並衆・前野将右衛門は、稲葉山城の戦いを経て、織田家の家臣・木下藤吉郎(後に天下人となる豊臣秀吉)に仕えることを決意する。その後、墨俣、金ヶ崎の戦いなど、さまざまな死線をくぐり抜けながら武功を重ね、秀吉の天下統一を支えた前野将右衛門。この男を待ち受ける悲運とはいったいどのようなものなのか。本作は、決して教科書に書かれることのない、恋に戦いに翻弄されながらも、たくましく激しい時代に生きた男の生涯を描いた戦国ロマン大作である。
この本を読むと、歴史に埋もれた一人ひとりの人生に、私たちと同じ濃度があることに気づかされます。戦国時代の人々も、現代人と同じようなことで悩み、葛藤していたのです。ものごとがうまくいかないと、時代や環境のせいにしたくなりますが、それは違うのかもしれませんね。
代表取締役 千堂 純子